職場やプライベートでの変化など、ストレスの引き金となる外的要因を受けると、
個人の性格や行動パターンによって特徴づけられる対処行動が取られます。
ストレスへの反応が強く出るか、ほとんど出ないかは、
毎日の運動や睡眠など生活習慣、周囲からのサポートも影響します。
軽度のストレスであれば、生体の適応現象の結果、無自覚のうちにやりすごす場合も多いでしょう。
反対にストレスが大きい場合、心身のストレス反応として自覚されます。
感情面での変化として、意欲が高まるなどプラスとなる反応以外にも、不安感、憂うつ感、イライラ感など、不快に感じられる気分も起こります。身体的な変化としては、体の緊張、不眠、血圧の変化などが起こります。ストレスは、必ずしも悪いものとは限らず、短期的には危険を避けたり、パフォーマンスを高める効果があります。しかし、ストレスが長く続くと、心身の不調として自覚されるようになります。
人生における変化を伴う出来事をライフイベントといい、
そのストレス度について、結婚を50として0〜100の範囲で自己評価した値をもとに作られた評価尺度が、
ストレスレベルの推定に用いられます
(ライフイベント法)。
日常生活の出来事 | 相対的 ストレス度 |
日常生活の出来事 | 相対的 ストレス度 |
---|---|---|---|
配偶者 の死 |
100点 | 家族の健康の変化 | 44点 |
離婚 | 73 | 妊娠 | 40 |
夫婦別居 | 65 | 仕事の 変化 |
30 |
近親者 の死 |
63 | 親友の死 | 37 |
傷害 ・疾患 |
53 | 転職 | 36 |
結婚 | 50 | 100万以上の借金 | 31 |
失職 | 47 | 子供の 家庭離れ |
29 |
退職 | 45 | 上司との トラブル |
23 |
配偶者への忍従 | 45 | 転居 | 20 |
表の中でも、仕事における変化がストレス要因として大きな役割を占めることが分かります。
厚生労働省の調査によると、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合は、毎年5〜6割程度という結果が出ています。
表の中でも、仕事における変化がストレス要因として大きな役割を占めることが分かります。
厚生労働省の調査によると、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合は、毎年5〜6割程度という結果が出ています。
・仕事の量、労働時間
・仕事の難しさ、質
・仕事内容の適性度
・対人関係(上司、同僚、部下)
・パワハラ、セクハラ
・上司や周囲からのサポートの有無
令和2年の調査で最も多いストレス要因は「仕事の量・質」(56.7%)です。
次に、仕事の失敗、責任の発生(35%)、そして対人関係(セクハラ、パワハラ含む)(27%)が続きます。
心身に負荷がかかる程度に仕事量が多い状態は、過重労働に該当します。
法定労働時間は週40時間、1日8時間ですが、労働基準法36条:時間外労働についての労使協定(通称36(サブロク)協定)が締結されていれば、
上限は月45時間・年360時間となります。この根拠として、睡眠時間が5時間以下になると、脳・心臓疾患の罹患率が高くなるためです。
36協定で特別条項が設定されていると、上限を超えた労働も可能ですが、下記を超える残業時間は、労働基準法において違法となります。
・1ヶ月の時間外労働、休日労働の合計は、100時間未満
・連続する2〜6ヶ月それぞれで、時間外労働・休日労働の合計の月平均は80時間以下
・1年の時間外労働の上限は720時間以内
・月45時間を超えるのは年6ヶ月まで
仕事量の他に、責任の重さもストレス要因となります。
役職は、会社における権限の目安となり、
取引が円滑に進んだり、役職手当が支給される場合もあり、モチベーションにもつながります。
一方、役職にはデメリットもあり、役職者が労働基準法上の「管理監督者」に当てはまる場合は、労働時間、休憩、休日の制限を受けないため、残業代が発生しません。また責任の範囲も広がります。自身の業務だけでなく、人材配置、部下の管理、業務の進捗管理などが職務に加わります。
仕事における対人関係がストレスになることも多いでしょう。
パワーハラスメント(パワハラ)とは、職務上の地位などの優越的な関係性を背景に、業務上必要がない行為により、
身体的もしくは精神的な苦痛を与えることや、就業環境を害することと言えます。
具体的には、人格否定的な暴言を吐いたり、大勢の前で叱責する、大勢を宛名に入れたメールで暴言を吐く、
物を叩きつけるなど威圧的な態度を取る、
指導をせずに放置するなどが該当します。
仕事量、責任、対人関係等のストレスが続くと、ストレス反応として、
3ヶ月以内に心身の不調を自覚する場合が多く、典型的には、抑うつ症状、不安症状、
自律神経失調症状などが起こります。
・憂うつ感が強い
・気分が沈む
・涙がとまらない
・やる気がわかない
・集中力や思考力が落ちた感じがする
・楽しかったことに興味がもてない
・朝から体がだるい
・日中に疲れやすい
・寝つきが悪い、
寝てもすぐに起きてしまう
・朝早く目覚めてしまう
・食欲が低下している
上記に当てはまる場合は、
次のセルフチェックもご利用下さい。
・焦燥感が強い
・不安でいてもたってもいられない
・ソワソワして集中できない
・胸がドキドキする
・呼吸が苦しい、過呼吸になる
・喉の詰まった感じがする
・胸の圧迫感、痛み、違和感を感じる
・めまいや吐き気を感じる
・体の一部が震える
・体が熱くなったり、冷たくなったりする
・体の一部にしびれを感じる
上記に当てはまる場合は、
次のセルフチェックもご利用下さい。
・体の緊張感やこわばり、痛み
・頭痛、肩こり
・寝汗の増加
・耳鳴り
・微熱
上記の症状が強いと、仕事を続けることが難しい場合があります。仕事でのストレス要因を背景に、心身の不調から就労が難しい場合、適応障害と診断されます。
抑うつ症状、不安症状、自律神経失調症状などを発症している場合、休職するかどうか判断が必要な場合があります。ご自身で判断が難しい場合は、医療機関の受診をお勧めします。
まず、症状の原因となっている業務上のストレス要因について検討します。ストレス要因がはっきりしていれば、就労上の措置や環境調整により、症状の軽快が見込まれる場合があります。
例えば、仕事量が過多である場合は、労務量の軽減や、残業制限の期間を設けることで、症状の改善につながる場合があります。一方、仕事への適性、仕事の難易度が原因である場合は、業務内容の変更や、配置転換を検討する方が本質的な解決につながる場合もあります。対人関係に問題があったり、ハラスメント行為を受けている場合などは、問題の性質に応じた対応が必要となります。
症状の程度も休職が必要か判断する上で重要です。症状が重く、すでに欠勤が繰り返されている場合は、早急に休職が必要です。
一方、症状を認めるものの、欠勤の頻度が少なく、就労できている場合、今後の症状の経過を考慮した上での対応が必要となります。治療や就業措置により回復が見込まれる場合は、休職せずに就労を続ける選択肢もあります。
反対に、症状が急速に悪化しており、通勤の安全性が確保できない場合や、業務効率が極端に落ちている場合、日常生活に支障が生じている場合、症状が悪化すれば回復に長期的な療養が必要となる場合など、積極的に休職を検討した方が良い場合があります。
症状の程度、発症の原因となったストレス要因、就業措置が可能か、治療や環境調整を行った場合の症状回復の見込み、予想される症状の経過などを総合的に考慮して、休職の判断を行います。自身では判断が難しい場合もあり、医療機関を受診して相談することをおすすめします。
体調不良等の理由で、本来出勤する日に自己都合で休むと欠勤となります。
欠勤は給与の支払いが行われない休みです。
一方、年次有給休暇(有給)は、事前に申請することで、給与を受けながら休暇を取ることができます。
病気で会社を休む場合、休みが数ヶ月など長期にわたる場合があります。
そのため「休職」という制度を利用します。多くの会社は、従業員が業務外の病気により労務不能となった場合、一定期間の休職を認めています。休職すると、会社に在籍したまま労務から免除されます。
休職制度は、法律上の決まりではなく、内容や条件は会社ごとに異なります。
休職を検討する際には、就業規則に休職制度があるのかどうか、休職できる期間を確認しましょう。
人事部門に問い合わせても良いでしょう。入社後すぐには利用できない場合や、就業期間に応じて休職できる期間が異なる場合もあります。
休職制度を利用するためには、病気により労務不能である状況を会社に伝える必要があります。
まず、医療機関を受診して、医師による診察を受けましょう。医師から労務不能であると判断された場合は、その旨の診断書を書いてもらい、
会社に提出して休職を申請する方法が一般的です。
診断書には、診断を受けた者の氏名、傷病名、療養期間、診断日、診断した医師の氏名と医療機関名が記載されます。
通常は、診断書を提出して初めて、病気による休職に入ることが可能となります。
会社によっては、診断書の提出後に産業医との面談が求められる場合もあります。
※当院では、診察を行い、症状の程度によっては、初診日に労務不能の旨の診断書を記載することが可能です。
ケガや負傷など、労務に従事したことが直接の原因となって労務に従事することができない場合には、
労災(労働災害)として労災保険の認定をうけることができる場合があります。
労災指定病院(労災保険指定医療機関)を利用すると、治療費を従業員が立て替えることなく、治療を受けることができます。
労災であるのに、指定外の病院を受診して健康保険を使うと、費用面でのメリットを受けることができなくなるため、注意が必要です。
※当院は、労災指定病院ではありません。
厚生労働省のHPに、労災指定病院の検索ができるサイトがありますので、
ご活用ください。
会社によっては、病気休暇を取得できる場合があります。
業務と因果関係のない病気によって労務不能となった場合に、業務に従事できる状態に回復するまで休暇を与えるものです。
病気休暇を取得できる場合、その期間中は給与が支払われます。病気休暇の取得日数には上限があり、その期間を超えて休む場合は休職に移行し、給与が支払われない状態になります。病気休暇の制度が設けられていない場合、または病気休暇を消化し終えた場合は、休職期間中に会社から給与の支払いは行われません。
給与に変わる所得補償として、一定の条件を満たせば傷病手当金が支給されます。
健康保険の被保険者が業務外の事由による病気やケガのために労務不能となった場合に支給される給付金です。支給期間は、同一傷病について、最長で1年6ヶ月、支給額は1日あたり標準報酬日額の3分の2とされています。傷病手当の給付開始には、3日間の待機期間が条件です。3日間の連続した休みの後、4日目から支給が行われます。途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給期間は通算され、1年6ヶ月まで繰り返して支給されます。
労災から休業補償給付を受けている場合は、傷病手当金は支給されません。
傷病手当金の申請手続きは、会社の人事を通じて行うのが通常です。
休職中で給与の支払いがない状態でも、社会保険料の支払義務は免除されません。
自身の健康保険、厚生年金保険、介護保険(40歳以上)の自己負担分は、休職期間中も支払う必要があります。また住民税が昨年の所得に対してかかります。
会社の担当者にその旨を申請し、手続きを行う必要があります。
「傷病手当金申請書」を作成して、会社を通して健康保険組合に対して提出する流れとなります。
申請書は健康保険組合のHPからダウンロードできますが、会社の担当者に伝えれば交付してもらえる場合が通常です。
書類が届いたら、申請書に必要事項を記載します。
1ヶ月単位で、給与の締切日(月末締めであれば、末日まで)ごとに申請を行う場合が通常です。
保険組合によっては、業務外の傷病であることや、労災の認定を受けていないことなどをチェックします。
不明な箇所は、担当医師に相談することをお勧めします。
※労務不能であった期間全体の症状等を記載する必要があるため、期間の途中では証明をもらうことができません。
※申請する各期間ごとに、医師から労務不能である証明をうける必要があります。それぞれの期間に、必ず医療機関を受診して下さい。
通院していないと、該当する箇所の証明を受けることができません。
会社の担当者が記入して、健康保険組合への申請処理を行うことが通常です。
自身の記入欄を埋め、医療機関の証明を受け、郵送した書類が会社に届くと、担当部署が必要箇所を記入して、保険組合への申請が行われます。
保険組合が申請を受付すると、審査が行われます。審査の結果、支給が決まると、支給決定通知書が送られ、振り込みが行われる流れが一般的です。
審査から振込までは、書類に不備がなければ1ヶ月以内の場合が多いようです。
不備がある場合は、申請書が会社に戻されます。支給が遅れている場合は、保険組合に連絡して、申請書が受付されているか問い合わせましょう。
受付されていれば、審査中であるか、不備がある場合にはその状況を確認することができます。
休職を開始した場合、ストレス要因を取り除き、療養と治療に専念することが大切です。
休職期間の上限は、会社により異なります。数ヶ月と短い場合もあれば、
1年以上の長期休職が可能な場合もあります。休職しても雇用契約は存続しており、
会社に所定の報告や連絡を行うことが義務付けられている場合があります。
できるだけ夜の11時頃には就寝し、
朝の7時には起きるサイクルを確立しましょう。7~8時間の睡眠が理想です。
朝に日を浴びることで、メラトニンの日内変動が整います。決まった時間に起きることで、一定時間のあとに眠くなるサイクルが作られていきます。
必要な時間よりも短時間の睡眠では、副交感神経が十分に作動せず、緊張がとれません。
逆に10時間以上の長時間睡眠では、体内時計が乱れたり、交感神経への切り替えが上手くいかず、一日中だるくなる場合もあります。
過度な活動は避けつつも、日中の活動性が維持できるよう、散歩等の体を動かす時間を規則的に取り入れていくことが大切です。
気分の変化には、テンションがたかい躁状態と、落ち込み感がつよい抑うつ状態があります。
躁状態からうつ状態へ移行するのを防ぐために、エネルギーや時間など最大の力の半分位で活動するのがよいでしょう。
何か行動するにあたって、やらなければならないかどうかよりも、やりたいか、そうでないかで判断することも大切です。
うつ状態になると、虚無感を感じたり、自責思考が強まり、不安や焦りが強くなります。
ネガティブな思考がぐるぐると頭を回り続ける反芻思考に入りそうだと感じたら、すぐに思考を止めることが大切です。
他の作業を始めるなど別のことに集中するのが一番です。
言葉の力でなりたい自分をひきよせるアファメーションの技術も有効です。
アファメーションで自分を肯定することで、ポジティブな考えや発言が習慣となっていきます。
昔と同じ働き方をすると、症状が再発するリスクがあります。
以前、元気に働けていた過去の自分に戻ることをイメージするよりも、現在の状態を踏まえて回復に向かうには何をすればよいか、
未来へと思考を向けていくことも大切です。
発症要因を理解するには、幼少期から就職するまでに培われた自己の特性の見直して、
現在の会社に入社してから症状を発症するまでの経緯を振り返り、現在の自分をとりかこむ家族関係に目を向けることなどが必要です。
そして再発を予防するために、状況に応じた具体的な対策を講じていくことも大切です。
こうした作業は一人で行うことが難しいため、カウンセリングやリワークを活用すると良いでしょう。
リワークとはreturn to workの略語であり、休職や離職している方が受けることができる、復職に向けた支援プログラムのことを指します。
リワークは、医療機関が行うプログラムを利用する場合が一般的ですが、地域障害者職業センターでも受けることができます。
また、会社が独自に復職プログラムを実施している場合もあります。
医療機関の実施するリワークに通所する場合、自立支援医療制度を利用していれば、1日に800円程度で受けることが可能です。
(健康保険の3割負担では、2400円程度となります)
通院中の医療機関は変更せずに、別の医療機関のリワークのみ利用することも可能ですので、医師に相談してみましょう。
休職期間中に症状が改善し、就労可能な状態となった場合、会社に復職したい旨を連絡する必要があります。
その際は、通院中の医療機関において、就労可能である旨の診断書を書いてもらい、会社に提出して復職を希望する流れになります。
医療機関で就労可能であるかを判定する上で、次のような判断基準を満たすことが求められます。
・就労への意欲が回復している
・適切な睡眠覚醒リズムが整っている
・通勤時間帯に一人で安全に通勤できる
・労務に必要な集中力が回復している
・決まった勤務日、
時間に就労が可能である
休職期間中は、就労環境とは異なる状態であるため、自分が復職できる状態か判断するのは難しい場合もあります。
自分の状態を評価する上で、模擬出勤や通勤訓練が有効です。
勤務時間と同様の時間帯に、図書館など擬似的な環境で時間を過ごすことです。
読書したり、労務に必要な勉強をしたりして、集中力の回復を確認します。
休職が長期間に及ぶ場合は、医療機関のデイケアやリワークを利用するのも良いでしょう。
自宅から職場の近くまで、就業開始時間に間に合うように、通勤と同じ経路を使って移動し、職場付近で一定期間過ごしたあとに帰宅することです。
通勤訓練を数日間連続で行うことで、就業時間に適した睡眠リズムが回復しているか、また通勤の安全性を確認できます。
※当院では、復職希望時には、通勤訓練により通勤安全性を確認していただいております。
会社によっては、症状が回復していることを確認するためにデイケア・リワークへの通所が求められたり、生活行動記録表の提出が求められる場合もあります。
試し出勤として、一定期間、本来の職場に試験的に出社することを求められる会社もあります(リハビリ出勤)。
復職の前に産業医との面談を求められる場合もあります。
これら審査の結果、会社で復職可と判断された場合、休職が終了し、復職となります。
復職時の業務内容は、復職前と同じである場合や、復職前の業務が症状の発症に寄与している場合、配置転換が行われる場合もあります。
復職後の1~2ヶ月は、症状の再発を避けるためにも、残業は避け、労務負荷の少ない業務から開始することが一般的です。
会社によっては、復職直後の軽減勤務として、フルタイムの勤務時間を短縮する時短勤務を利用できる場合もあります。
休職期間満了日までに復職に至らない場合には、自然退職(休職期間満了)または解雇(会社都合退職)となります。
退職と解雇のいずれに該当するかは会社の就業規則を確認しましょう。
退職日に労務不能であり、退職後も在職中と同一の傷病により労務不能状態が継続している場合、
傷病手当金支給日~1年6ヶ月以内であれば、退職後も傷病手当金を受給することができます。
退職後に傷病手当を受給するためには、下の4つの条件を満たす必要があります。
1.退職日に労務不能であること。
2.退職日の前日までに連続3日以上の労務不能期間(待機期間)があること。
労務不能期間は土日祝でも有休でも構いません。
3.退職日まで健康保険に連続して1年以上の被保険者期間があること。
会社や保険者が異なっても1年間継続して被保険者であれば問題ありません。
任意継続被保険者・国民健康保険の加入期間は含みません。
全国健康保険協会の場合、共済組合の加入期間は含みません。
4.退職日に傷病手当金の受給権を得ていること。
在職中に傷病手当の受給を開始していない場合は、退職する前に待機期間を終えている必要があります。
在職中に傷病手当金の受給をすでに開始している場合は、1年以上の被保険者期間があれば(在籍1年以上)、退職後も傷病手当が継続されます。
一方、傷病手当金の申請を退職後に初めて行う場合、待機期間を含めた在職最後の期間分に関して、初回の申請は必ず会社を通して行う必要があります。
※退職日の前に必ず医療機関を受診して、病気のために労務不能であることの診断を受けましょう。待機期間(3日間)の前に受診していることが必要です。
なお、退職後に失業保険を受ける場合は、傷病手当金を受給できません。
失業保険は、働く能力や意思があるにもかかわらず、仕事に就くことができない場合に支給されるものです。
それに対して、傷病手当金は病気・ケガにより働くことができない方に支給されるものです。
退職後の傷病手当の支給金額は「直近の12ヶ月の標準報酬月額の平均」で算定されます。
1日あたりの金額は、(平均額)÷30日×(2/3)となります。
12ヶ月分を確認できない場合は、確認できる範囲の標準報酬月額の平均と全被保険者の平均標準報酬月額のうち低い方となります。
※申請する各期間ごとに、在職中と同じ傷病により労務不能である証明をうける必要があります。それぞれの期間に定期的に医療機関を受診して下さい。
退職後に傷病手当を受給できない場合、失業手当を受給できる場合があります。
失業手当を受け取るには、
ハローワークが定める「失業の状態」であることが必要です。
「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない」状態です。失業手当を受給するには、離職前の会社で雇用保険に入っており、
特定の条件を満たした人が対象になります。
一般的には、失業手当を受給できる条件として、離職日以前の2年間に、
雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上あることが必要です。
その場合、雇用保険の受給手続きから7日経過した日の翌日から2ヶ月間の給付制限を経て、失業手当の受給が始まります。
しかし自己都合による退職でも、自分の意思に反する正当な理由がある場合は、
「正当な理由のある自己都合退職」となり、「特定理由離職者」に認定されます。
有期雇用契約の更新を希望したが認められず離職した場合や、病気により自己都合退職した場合などが、特定理由離職者に該当します。
この場合、失業手当が受け取れる雇用保険の条件として、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上あることが必要になります。
特定理由離職者の場合、受給資格決定日から7日間の待機期間を経て、給付が開始されます。実際に振込が行われるのは、受給資格決定日から約1ヶ月後です。
なお、企業の倒産や解雇によって、再就職の準備をする時間的な余裕なく離職を余儀なくされた場合は会社都合退職であり、「特定受給資格者」に該当します。
休職期間中に転職活動を行うこと自体は
違法ではありませんし、
転職することも可能です。
転職活動時に休職を伝えるかどうかは個人の判断に任されており、法的な義務はありません。
休職していることが転職先の会社に明らかになる場合として、転職時に源泉徴収票の提出を求められる場合、
また、年末調整時に源泉徴収票を提出する際に、記載された給与額が低い場合などで知られうる可能性があります。
転職先の会社に年末調整を依頼しない場合は、自身で確定申告を行うことも可能です。
転職後の就労先で求められる業務内容が遂行できていれば、休職の経緯は問題ないことがほとんどですので、
転職活動を行う場合は、体調が回復した状態で活動を開始することが勧められます。